AIが作った資料を、社内で誰がどこまで確かめるか。この問いに「全部、上長が読む」と答えている会社は少なくありません。逆に、いつの間にか「作った本人が見たことになっている」まま回っている会社もあります。
どちらも続きません。前者は確認の時間で効率化が消え、後者はいずれ事故になります。
答えは「資料ごとに確かめる深さを変える」です。 分け方の軸は2つだけで足ります。その資料が社外に出るかと、間違えたときに取り返しがつくか。この2つで資料を4つに分ければ、誰がどこまで見るかはほぼ自動で決まります。
確認を「工程のどこに置くか」については、AIが書いたものは、誰がどこで確認するのかで整理しました。この記事はその手前の話で、資料の種類ごとに、確かめる人と深さをどう決めるかを扱います。
※本記事は2026年8月時点の、当社が自社の運用で考えてきた範囲の整理です。AIの出力の誤り率を調べた統計は持っていないので、そうした数字は書きません。
考えてみてください。AIを使い始めたばかりの頃、確認のルールを決めてから使い始めた会社は、どれくらいあるでしょうか。
多くの場合、順番は逆です。まず誰かが使い始め、便利なので広がり、ある日、AIが書いた資料の中の小さな間違いが見つかる。そこで初めて「確認はどうなっているのか」という話になります。
このとき出てくる対策は、たいてい「上長が全部見る」です。分かりやすく、責任の所在も明確に見えるからです。
ところが、上長が読む量は、AIで資料を作る量に合わせて増えていきます。作る側は速くなったのに、読む側の速さは変わりません。数週間もすると、読む人のところで資料が詰まります。
そうなると、現場は詰まりを避けるために、確認を通さない道を作り始めます。「これは社内向けだから」「急ぎだから」。そうして気づくと、ルール上は全部見ていることになっていて、実際は誰も見ていない状態になります。
つまり、両極に寄るのは担当者の怠慢ではありません。資料をひとまとめにして、同じ深さで確かめようとしていることが原因です。
分ける軸は、次の2つです。
当社も自社のマーケティングをAIで運用するなかで、AIに任せるか人が持つかを「間違えたときに取り返しがつくか」で分けています。外に出る直前には必ず人の承認を挟みます(運用の形は私たちの働き方で公開しています)。その考え方を、資料の確認に当てはめたのが次の表です。
| 取り返しがつく | 取り返しがつかない | |
|---|---|---|
| 社内で閉じる | ①作った本人が見る | ②判断する人が根拠を見る |
| 社外に出る | ③本人+決めた点を別の人が見る | ④別の人が全体を見て、名前を残す |
それぞれ、具体的にはこういう資料です。
議事録の下書き、社内チャットの要約、調べものの下調べメモなど。間違っていても、気づいた人が直せば済みます。
ここは作った本人が見れば十分です。上長の確認を挟むと、確認の時間のほうが作る時間より長くなります。ただし「AIが作ったまま」であることは、資料の頭に一行書いておきます。読む人が、どこまで信用してよいかを自分で判断できるようにするためです。
意外に見落とされるのがここです。社外には出ませんが、その資料をもとに何かが決まるものです。役員会に出す数表、予算の見積もり、採用や人事の判断材料など。
この種の資料は、間違いに気づいたときには、もう発注や採用が決まっています。社内だからと軽く扱うと、外に出る資料より大きな損になることがあります。
ここで確かめるのは、資料を受け取って判断する人です。全文を読む必要はありません。結論を支えている数字と、その出どころだけを見ます。そのために、AIに資料を作らせるときは「どのデータから出した数字か」を併記させる、と決めておきます。出どころの書かれていない数字は、判断に使わない。それだけで、確認はかなり軽くなります。
Webサイトのお知らせ、SNSの投稿、社外向けのブログ記事など。外には出ますが、間違いに気づけば訂正や差し替えができます。
ここは、作った本人が全体を見たうえで、別の人が、決めた点だけを見ます。別の人が全文を読み直す必要はありません。何を見るかは次の節で決めます。
見積書、契約にかかわる文書、顧客への個別の回答、全顧客へのメール配信など。送ったものは取り消せず、書いたことが約束として残ります。
ここだけは、作った人とは別の人が全体を読み、確かめた人の名前を残します。手間はかかりますが、この種の資料は他の3つより数が少ないはずです。数が少ないところに確認の時間を集めるから、全体として続く、という考え方です。
③と④で別の人が見るとき、「よく見ておいてください」と頼むと、相手は読み物として最初から最後まで読みます。そして、どこを見ればよかったのかが分からないまま、言い回しを直して返してきます。
AIの資料で確かめる点は、次の3つに固定します。
この3つは、AIがもっともらしく間違えやすく、しかも間違えたときに会社が責任を負う部分です。逆に、言い回しや構成の好みは確認の対象から外します。外すと決めておかないと、確認する人はどこまで直してよいか分からず、結局全部読み直すことになります。
固定しておくと、もう一つ良いことがあります。確認を頼む側が、事前に自分で同じ3点を見てから渡せることです。確認する人の前に一度ふるいがかかるので、戻ってくる指摘が減ります。
確認の運用が形だけになる一番の原因は、誰が確かめたのかが残らないことです。「確認済み」とだけ書かれた資料は、誰も確かめていないのと見分けがつきません。
残し方は簡単で構いません。②③④の資料の末尾、または送信の記録に、次の3つを書きます。
名前が残ると、確かめる人の見方が変わります。自分の名前で出す以上、決めた点は本当に見るようになります。そして、のちに間違いが見つかったときも、「誰の責任か」を探すためではなく、どの点を見落としたのかを振り返るために使えます。見落としやすい点が分かれば、次からその点を確認項目に足せばいい。
ここで注意したいのは、名前を残すことを、間違いを責める道具にしないことです。そうすると、誰も確認役を引き受けなくなり、結局また「誰も見ない」に戻ります。
まず、社内でAIを使って作っている資料を、思いつくかぎり書き出してみてください。完璧な一覧でなくて構いません。
次に、それぞれを表の①〜④に振り分けます。迷ったら、取り返しがつかないほうに入れます。
そのうえで、次の3つを決めます。
この振り分けは、AIに任せないほうがいいと当社は考えています。どの資料が取り返しのつかないものかは、その業務を実際に回している人にしか分かりません。
確認の体制は、厳しくするほど続きにくくなります。深く見るところを絞り、そこでは名前を残す。そのほうが、結果として確認は続きます。
自社の資料をどう振り分けるか、社内で線を引くところから一緒に考えることもできます。お問い合わせからご相談ください。