営業部は議事録の要約にあるツールを使い、広報は別の文章生成ツールを契約し、カスタマーサポートは問い合わせ対応用にまた別のものを入れている。気づけば、社内にAIツールの請求書が何枚も届いている。そんな状態になっていないでしょうか。
先に結論を書きます。増えすぎたAIツールを片づけるとき、最初にやるべきことは「一本化」ではありません。顧客の情報がどのツールを通っているかを洗い出し、そこから順に揃えることです。
契約の数が多いことそのものは、実はたいした問題ではありません。費用が少し重複しているだけです。本当に困るのは、顧客の名前や問い合わせの中身が、誰も把握していないツールを通っていることです。片づけの優先順位は、そちらで決めます。
※本記事は2026年10月時点の当社の考え方を整理したものです。特定の製品の優劣は評価しません。社内のツール数や重複費用についての統計も持っていないため、削減額の試算は載せません。
ツールが増えた状態を見ると、多くの会社はまず「全社で一つに揃えよう」と考えます。管理する側からすれば、自然な発想です。
ところが、話はそう単純ではありません。
部署ごとにツールが増えたのは、だいたいの場合、その部署の仕事にそのツールが合っていたからです。営業が使っているものは商談の記録に強く、広報が使っているものは長い文章に強い。一本化すると、どこかの部署は「前より不便な道具」を渡されることになります。
すると何が起きるか。
最後の点が一番まずいところです。統一を急いだせいで、管理の外に出る利用が増える。片づけのつもりが、見えない場所を増やしてしまうんです。
つまり、問題は「ツールの数」ではなく「会社が見えていない情報の流れ」です。数を減らすことを目標にすると、この本当の問題を悪化させることがあります。
片づけの最初の一歩は、ツールの一覧ではなく、ツールとデータの組み合わせの一覧を作ることです。
部署の担当者に聞いて、次の表を埋めてみてください。
| 項目 | 確認すること |
|---|---|
| ツール名と契約形態 | 会社契約か、個人契約か、無料プランか |
| 使っている部署と人 | 誰が、どの業務で使っているか |
| 入れているデータ | 顧客の名前・連絡先、問い合わせ内容、社外秘の資料、公開済みの情報だけ、のどれか |
| 出てきたものの行き先 | 社内で使うだけか、顧客や社外に出るか |
| 管理者 | 契約や設定を変えられるのは誰か。退職したらどうなるか |
ポイントは三つめの「入れているデータ」の列です。ここで、ツールははっきり二つに分かれます。
前者は、会社として管理すべきものです。後者は、極端に言えば部署ごとにバラバラでもあまり困りません。
もう一つ、必ず拾っておきたいのが「個人契約」と「無料プラン」です。会社の請求書に出てこないため、経理から一覧を作ると漏れます。担当者への聞き取りでしか見つかりません。責める場ではなく「把握したいだけ」と伝えて聞くほうが、正直な答えが返ってきます。
データの置き場所が分からない問題そのものについては、小さい会社のAI導入で先に詰まるのは、ツール選びではなく「データの置き場所」ですでも整理しています。
棚卸しができたら、ツールを三つに分けます。
顧客の名前、連絡先、問い合わせの中身、契約の情報。これらが通るツールは、会社として契約し、管理者を決め、設定を確認できる状態にします。
ここで揃えるのは「製品」とは限りません。守るべき条件を揃えるんです。
この条件を満たすツールが部署ごとに別々でも、それ自体は大きな問題ではありません。条件を満たさないツールに顧客情報が通っていることが問題です。
広告文、ブログ、メール配信の文面など、社外に出るものを作るツールです。ここは製品を統一するより、外に出る前に人が確認する場所を揃えるほうが効きます。どのツールで書いても、公開の前に同じ確認を通るなら、事故の形は読めます。確認の置き方はAIが書いたものは、誰がどこで確認するのかにまとめています。
公開済みの資料の要約、社内向けの下書き、アイデア出し。ここは部署の好みで構いません。無理に揃えると、冒頭で書いた「前より不便な道具」の問題だけが起きます。
ただし、使ってよい情報の線は全社で共通にしておきます。「この区分の情報は入れない」という線が一つあれば、道具が違っても判断はぶれません。ルールの書き方は生成AIの社内ルールに書くのは、ツールの可否ではなく「このツールに何を渡してよいか」ですで例を出しています。
ここで一番多い失敗が、解約から入ることです。
重複している契約を見つけると、すぐに止めたくなります。ところが置き換え先が決まる前に止めると、そのツールの中にあった設定・テンプレート・過去のやり取りが失われ、担当者は仕事の手順を一から組み直すことになります。そして先ほどの話のとおり、個人アカウントに逃げます。
順番は次のとおりです。
特に3の「手順書を書き換える」が抜けやすいところです。ツールを替えても、現場の手順書に旧ツールの名前と操作が書かれたままだと、翌月には元に戻っています。研修のあとに現場が動かない理由と、構造はまったく同じです。そちらは生成AI研修のあと現場が動かないのは、やる気ではなく「戻った先の手順」が変わっていないからですで書きました。
5の「データの削除を確認する」も見落とされがちです。解約しても、入れたデータがすぐ消えるとは限りません。顧客情報が通っていたツールであれば、解約の前に、削除の扱いを契約や設定で確かめておく必要があります。ここは製品ごとに違うため、一般論では言えません。
順番に並べます。
契約の数を減らすことは、片づけた結果としてついてくるものです。目標にするものではありません。最初に見るべきは、請求書の枚数ではなく、顧客の情報の通り道です。
当社は自社のマーケティングをAIエージェントで運用していますが、どの工程も外に出る直前に人の承認を挟む形にしています。道具の数より、どこで止まるかを先に決めるという考え方です。運用の形は/how-we-work/で公開しています。
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