「また新しいモデルが出ましたが、今度こそ見直すべきでしょうか」。
先に答えを書きます。見直すのは「どのモデルを選ぶか」ではありません。「社内の誰が、どの画面で、どのモデルを使っているのか」を把握できているかどうかです。
2026年9月22日、OpenAIが「GPT-6 Sol」と「GPT-6 Luna」を発表しました。出典はこちらです。
お断りしておきます。当社はこのモデルをまだ業務で動かしていません。また、今回は公式ページの本文を直接読める環境になく、公式ドメインに限った検索で要旨とURLを確認しています。ここに書くのは、そうして確認できたことと、その読み方だけです。確認できなかった価格の細部や仕様は書いていません。
今月の初めに出たGPT-6 Astraは、AIが画面を操作して長い仕事を終わらせる、いわば最上位のモデルでした(当社の整理はGPT-6 Astra の記事にあります)。
今回のSolとLunaは、その下の段です。公式発表では、Astraと同じような方法で訓練し、その進歩をより速く、より安いモデルに持ち込んだものと説明されています。
法人にとって大事なのはここです。
社内でAIに任せている仕事の大半は、最上位のモデルを必要としていません。議事録の要約、メールの下書き、資料の構成案、問い合わせの一次分類。こうした毎日の仕事を回しているのは、むしろ「普段使いのモデル」のほうです。今回の発表は、社内の利用量のいちばん多い部分の前提が動いた、という話です。
公式が出している数字をいくつか挙げます。
いずれもOpenAI自身が測った値で、第三者が検証したものではありません。 そのつもりで読んでください。
3つめの数字には、注意して読むべき点があります。
比較の相手になっているのはClaude Opus 5です。ところが同じ9月22日に、Anthropicは後継のClaude Opus 5.5を発表し、値下げもしています(当社の整理はClaude Opus 5.5 の記事にあります)。
つまり、この比較は発表の時点ですでに一世代前の相手との比較です。どちらが上かは、今の時点では判断できません。
ここで「ではどちらのモデルが得か」を決めにいくと、判断を誤ります。提供元が自分で選んだ指標で、自分で選んだ相手と比べた数字は、どの会社の発表でも有利に見えるように作られています。これは悪意ではなく、発表とはそういうものです。
自社で判断に使えるのは、自社の業務で同じ仕事をさせて比べた結果だけです。
ここが、法人の担当者にとっていちばん実務的な話です。
公式の告知によれば、SolとLunaは発表当日から、ChatGPT Work と Codex で、Plus・Pro・Business・Enterprise・Eduの利用者に提供されています。APIでも使えます。一方で、通常のチャット画面にはまだ来ていない、とも書かれています。
そして、見落とされやすい一文があります。FreeとGoの利用者も、デスクトップアプリでGPT-6 Lunaを使えるとされています。
考えてみてください。会社が契約していない個人の無料アカウントで、社員が仕事の文書を扱っている。これは多くの会社で、すでに起きていることではないでしょうか。モデルが安く賢くなるほど、会社の契約の外で済ませてしまう理由は増えます。
これは「禁止すれば済む」話ではありません。会社で用意した環境のほうが使いにくければ、社員は外へ流れます。社内の環境と、社内のルールの両方が、外の無料版に負けていないか。今回の発表で問われているのはそこです。何を渡してよいかの線の引き方は、社内ルールの記事に書いています。
やることは3つです。
1. 自社の契約で、どの画面に何が出ているかを確かめる。 「ChatGPT Work には出ているが、通常のチャットには出ていない」という状態は、社内で混乱を生みます。管理者が自社のワークスペースを開き、どこで何が選べるのかを確認して、一行でいいので社内に知らせてください。
2. 社員が個人アカウントで仕事をしていないか、聞いてみる。 調査ではなく、聞くだけで構いません。「会社の環境で足りないのは何か」も一緒に聞くと、次に整えるべきものが見えます。
3. 普段使いの仕事を1つ選び、今のモデルと並べて試す。 議事録の要約でも、問い合わせの分類でも構いません。同じ材料で出力を並べ、人が直した量を比べる。これが、発表の数字よりずっと信頼できる判断材料になります。どの仕事から試すかの選び方は、戻せる仕事から始める記事を参考にしてください。
OpenAIとAnthropicのどちらに寄せるかは、今週決めなくていいです。同じ日に両社が新しいモデルを出し、両社とも価格を下げました。比較の数字はそれぞれの自社発表で、相手も揃っていません。実務での評価が出そろうには、まだ時間がかかります。
APIの利用設計の作り直しも、急がなくていいです。価格が下がったことで、今まで費用を理由に諦めていた使い方が候補に戻るのは確かです。ただ、どこまで任せられるかは、事実性の改善が自社の文書で本当に効くかを見てからでも遅くありません。
「誤りが半分になったから、確認を減らしてよい」とも、まだ判断できません。 減ったのは提供元の評価の上での話です。外に出るもの・お金が動くもの・取り消せないものに人の確認を残す線は、動かさないでください。どこに人が残るのかは、人が残る工程の記事で整理しています。
モデルは月に何度も新しくなります。そのたびに乗り換えを検討していては、社内の仕事が落ち着きません。
変わるたびに確かめるのは、3つだけで足ります。社員がどこで使っているか。自社の仕事で試したらどうだったか。人の確認をどこに残しているか。この型ができている会社は、次の発表が来ても同じ手順で受け止められます。
当社の企業向けAI研修では、この「新しいモデルが出たときの受け止め方」を、社内で回せる手順としてお伝えしています。内容は企業向けAI研修をご覧ください。