生成AI研修を社内でやるか、外部に頼むか。この相談で最初に出てくるのは、たいてい「社内に教えられる人はいるか」という問いです。
ところが、そこはあまり分かれ目になりません。社内で一番AIに詳しい人なら、初回の講義はたいてい何とかなります。 内製で詰まるのはその先です。
実際に止まるのは、次の2つの仕事を持つ人がいないときです。
つまり、判断の軸は「教える人がいるか」ではなく、**「直す人と答える人がいるか」**です。この記事では、社内にいる人の役割から、内製に向く会社と外部に向く会社を分けます。
※本記事は2026年10月時点で、当社が研修と自社のAI運用で考えてきた範囲の整理です。内製と外部委託の成果を比べた統計は持っていないので、そうした数字は書きません。
考えてみてください。内製の研修を立ち上げるとき、準備に一番時間をかけるのはどこでしょうか。
多くの場合、初回の講義資料です。何を話すか、どの画面を見せるか、どんな演習をするか。ここは担当者の熱意で乗り切れます。
問題は、生成AIの道具が止まってくれないことです。新しいモデルが出る、画面の配置が変わる、使える機能が増える。そのたびに、講義資料の画面写真や手順の説明が古くなります。
最初に作った人は、たいてい本業を別に持っています。教材の手直しは誰の仕事でもないので、後回しになります。数か月すると、資料に写っている画面と、受講者が開く画面が合わなくなる。受講者はそこで「この資料は古い」と判断して、資料ごと信用しなくなります。
もう一つは、受講後の質問です。研修のあと、現場では「この書類に使っていいか」「この出力は合っているか」という具体的な質問が出ます。答える窓口が決まっていないと、質問は講義をした人に個人的に集まり、その人の本業が止まります。
この構造は、社内のAI推進担当に任せるのは「型づくりと相談窓口」までで書いた、詳しい人に雑務が集まって止まる話と同じです。
つまり内製の弱点は、講義の質ではありません。講義のあとに続く仕事に、持ち主がいないことです。
ここで一つ、内製の負担を軽くする方法があります。教材にモデル名や画面の位置を書き込まず、**「出力のどこを確かめるか」**を中心に書くことです。
モデルが替わっても、「数字は元の資料と突き合わせる」「固有名詞は公式の表記を確かめる」といった確認の点は変わりません。手順書の書き方としては、AIのモデルが毎月替わっても、社内の手順書は書き直さなくていいで整理しました。
ただし、これで直す仕事がゼロになるわけではありません。演習の画面、使ってよい道具の一覧、社内ルールとの対応は、どうしても替わります。直す量は減らせても、直す人は要る。ここは外せません。
社内にいる人の役割で分けると、おおむね次のようになります。
| 社内にいる人 | 向いている形 |
|---|---|
| 教材を直す人も、質問に答える人もいる | 内製でよい。外部は年に一度の見直しや、新しい分野だけ |
| 質問に答える人はいるが、教材を直す人がいない | 教材と講義は外部、受講後の相談は社内 |
| 教材を直す人はいるが、質問に答える時間がない | 教材は社内、受講後の相談窓口を外部に頼む |
| どちらもいない | 外部に頼む。あわせて、社内で質問を受ける人を一人決める |
表の下の段ほど外部に頼む割合が増えますが、どの段でも「社内で質問を受ける人」は残ります。 外部の講師は、自社の業務の細かい事情を知りません。「この取引先向けの書類に使っていいか」は、社内の誰かが判断する必要があります。
逆に言えば、外部に頼むときに確かめるべきなのは講義の上手さより、教材を誰がいつ直すのかと、受講後の質問をどこまで受けてくれるのかです。この2つが契約に書かれていない研修は、内製と同じところで止まります。
外部に頼んでも、研修のあとに職場の手順が変わらなければ、現場は元のやり方に戻ります。手順書を書き換えるのは、外部の講師ではなく業務の責任者です。この点は生成AI研修のあと現場が動かないのは、やる気ではなく「戻った先の手順」が変わっていないからで詳しく書きました。
つまり、外部に出せるのは「教える」と「教材を最新に保つ」まで。手順を変える判断は、どの形でも社内に残ります。
外部の研修の価格は、公開されている情報を見るかぎり、1名あたり6万円〜30万円と幅があります。統計調査ではなく、提供各社の掲載価格を見た範囲です。幅が何で決まるかは生成AI研修の費用相場と、使える助成金の考え方で整理しています。
内製は、この金額が「かからない」ように見えます。ところが実際は、教材を直す時間と、質問に答える時間が社員の工数として毎月出ていきます。見積書に載らないだけで、ゼロではありません。
比べるときは、外部の見積もりと「ゼロ」を比べるのではなく、外部の見積もりと、直す人・答える人の時間を並べてください。後者は、担当者にひと月に何時間かかっているかを一度書き出すだけで見えてきます。
なお、外部の研修は人材開発支援助成金の対象になり得ます。ただし、申請するのは研修を受ける企業側で、研修会社ではありません。研修を提供する側が国の認定を受けている必要もありません(事前認定の制度は廃止されています)。支給されるかは労働局の審査で決まり、研修会社が保証することはできないので、管轄の労働局に確認してください。詳しくは生成AI研修に助成金は使えるのかにまとめています。
内製か外部かを決める会議の前に、次の3つに答えを用意しておくと、話が早く進みます。
1と2に名前が入るなら、内製で始めて構いません。入らないなら、そこを外部に頼む前提で比べるのが筋です。3は、どちらを選んでも社内で決める必要があります。
当社は企業向けのAI研修を提供していますが、すべてを外に出すことを勧めてはいません。社内に直す人と答える人がいるなら、内製のほうが自社の業務に近い研修になります。足りない役割だけを外部で補う形も含めて、どこを任せるかの切り分けからご相談いただけます。詳しくは企業向けAI研修をご覧ください。